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菅義偉官房長官が圧倒的優位の自民党総裁選:ポスト安倍の「菅義偉・石破茂・岸田文雄」の三候補の違いは?

自民党総裁選の画像 ニュース

歴代最長の安倍政権の「健康問題」による突然の幕切れ

安倍晋三首相の持病(潰瘍性大腸炎)が悪化して、8月28日に突然の辞任表明をしたことには驚かされました。2012年12月に第二次安倍政権が発足してから、安倍首相の連続在任日数が2020年8月28日で7年8ヶ月(2803日)になっていたところでした。

安倍首相は佐藤栄作元首相を抜く歴代最長政権の記録を作ったわけですが、安倍政権に対して有権者の賛否があるものの、本人としては「改憲・安全保障・社会保障・経済と財政の再建」などの政治目標において道半ばで退陣することになりました。

安倍首相が健康問題で辞任することとなり、次の首相を選ぶ自民党総裁選には「菅義偉・石破茂・岸田文雄」の三人が名乗りを上げています。しかし、総裁選自体の結果は、現時点で派閥支持を取り付けている(議員票394票の大半を得られる見通しの)菅義偉官房長官が圧倒的に優位と報じられています。

安倍首相の後任を決める今回の総裁選そのものは日程が足りないということで、全国の自民党党員(個人)は投票できないことに決まりましたが、自民党の都道府県単位の支部は投票権(各3票・141票)を持っています。総裁選の勝負そのものは、安倍長期政権の継承を支持する「派閥の論理」で決すると予測されますが、菅さん自身は「閣僚人事や政策について派閥の要望は聞かない(自分で人事・政策を決める)」と宣言しています。

次の首相に菅義偉さん(71)が就任する確率が非常に高くなっている一方で、対抗馬として立候補してきた石破茂元幹事長(63)と岸田文雄政調会長(63)の政治信条・人となり・背景も気になるところです。

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官房長官の菅義偉氏

菅義偉氏(71)は世襲の石破茂氏・岸田文雄氏とは違って、非世襲・苦学で市議会議員(横浜市)から国会議員に当選した「叩き上げの議員」です。

菅義偉氏は秋田県出身で法政大学卒ですが、いったん卒業後に建電設備に就職してから、「社会を動かしているのは政治である」と洞察して政治家を志したといいます。法政大学にもダンボール工場で2ヶ月ほど働いた後に入学しています。

小此木彦三郎衆院議員の秘書を務めてから政治家としてのキャリアが始まりますが、政治姿勢・政策方針などで私淑していた梶原静六衆院議員を師と仰いでいます。

菅氏は郵政民営化担当大臣・総務大臣・官房長官を歴任していますが、今までは表舞台に立ってリーダーとして政治を主導するタイプではなく、今回の総裁選では「安倍政権の政治経済路線の継承」のために推戴・推挙された側面も強くなっています。

菅義偉氏の政策として目立つのは、総務相時代からの悲願でもある「スマホ料金の値下げ(三大キャリアとそれ以外のキャリアに競争原理を働かせる)」と株価下落などを抑える「アベノミクス路線・金融緩和路線の継承」でしょう。

長期安倍政権の基本的な経済財政政策を踏襲しながら、新たな政治・経済の改革や地方創生を進めていくという政治姿勢なので、菅氏が総裁・首相になることは「リスクの小さい選択(大きな現状変化はないだろう選択)」と見られています。

討論会で「日本の好きなところ」を問われて、「秋田県で生まれ横浜市で政治家として育てられてきたとして、地方を原点とした政治をしたい」と答えていますが、質問の趣旨からはややずれているものの、「地方を中心とした活力」といったところでしょうか。

座右の銘は、今までの自分の人生を自分の意志と決断で切り開いてきたこととも重なる「意志あれば道あり」です。

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元幹事長の石破茂氏

石破茂氏(63)は祖父の石破市造は大御門村長、父の石破二朗は鳥取県知事・衆院議員(自治大臣)を務めた世襲議員ですが、防衛庁長官(小泉純一郎内閣)・防衛大臣(福田康夫内閣)のキャリアが長く地方創生担当大臣になる前は「国家安全保障関連の主張・持論」が目立っていました。

旧三井銀行の銀行員のキャリアから1986年に政治家に転身してますが、父が亡くなった時に田中角栄から出馬を勧められたエピソードは昭和の政治史の動きを感じさせます。小泉政権時代、「新国防族」と言われるようになっていた石破茂は、「有事法制の成立・9.11(2001年の米国同時多発テロ)後の自衛隊のイラク派遣」などを主導しています。

2018年9月にも自民党総裁選に出馬して安倍首相と一騎打ちになりましたが、第二次安倍内閣の大臣を辞してから、石破氏は自民党内にあって「安倍政権に批判的に物言う人物」としてのポジションに位置づけられています。

石破茂氏の国家安全保障観は、「国外有事の際に、自衛隊を邦人救出のために動かせる法制を整えること」や「憲法9条2項の改正で自衛隊を日本軍と位置づけること(徹底した文民統制の下の名誉と規律のある国軍化)」を主軸にしています。

経済財政政策では「財政健全化を憲法に明記する」との主張があるように、アベノミクスにどちらかといえば批判的な「財政再建論者」になります。

石破氏は難しい専門知の概念を駆使するような理屈っぽい演説・討論のスタイルが目立ち、派閥・人間関係に左右されずに党内で反対意見を述べたりすることも多いため、「自民党議員からの人気」はいまいちと言われてはいます。世論調査では菅氏よりは支持率は低いですが、岸田氏よりは高くなっています。

総裁選に臨んで、「安全保障・憲法改正」と合わせて「東京一極集中是正による地方再生」を掲げています。

討論会で「日本の好きなところ」を問われて、「皇室を尊び、祖先・家族・地域を大切にする国であるところ」と答え、「日本だけが素晴らしいのではなく、他国を尊重することも大切」というバランス感覚を見せています。

座右の銘は、付和雷同を嫌ういかにも石破氏らしい「鷲鳥は群れず(しちょうはむれず)」ですが、これだと党内調整は難航するような……

政調会長の岸田文雄氏

岸田文雄氏(63)は東京都出身で父・岸田文武と祖父・岸田正記が元衆議院議員であり、宮沢喜一元首相とも縁戚関係がある世襲議員ですが、同じ世襲でも安倍晋三氏・麻生太郎氏ほど知名度・押し出しは強くなく、どちらかというと政権の土台を影で尽力して支えてきた政治家でしょう。

岸田氏本人がテレビ番組で自分について「前に出て自分が目立つタイプやトップダウンで命令するタイプではなく、自分はいろいろな人の話をよく聞いてからまとめていくタイプのリーダーだと思う旨」の発言をしていましたが、政治信条の中核に対話と連帯を据えているように感じました。

Twitterに「妻が食事を作ってくれました」と夫婦写真をアップした時に、「妻を立たせて座った夫が食事する図式」に男尊女卑ではないかとの批判が起こったりもしましたが、妻自身が「夫婦仲は良い・夫が風呂掃除など料理以外の家事をしてくれる」など即座にフォローしていました。

岸田氏の政策・政治理念で他の自民党議員にはあまり見られないものとして、「経済的・社会的な格差縮小(格差を小さくして国民が連帯・協調できるようにする)」があり、具体的にどういった政策で格差を縮めるのかまでははっきりしませんが、岸田氏の個性的な政策・理念になっていると言えるでしょう。

もう一つは、菅氏が「アベノミクス継承(異次元の金融緩和・株価重視の継続)」を強調しているのに対して、岸田氏は以前から「財政再建論者」であるという違いがあります。

安倍政権では1200兆円を超えて増え続ける累積政府債務を当面は減らす必要がないといったスタンスで巨額の経済財政政策を続けてきましたが、岸田氏は財政再建が必要であるとして「プライマリーバランス(財政収支の均衡)」を重視するスタンスの政治家です。

岸田氏は安倍政権で外相として重用され、安倍首相と個人的にも親しい関係にありますが、経済財政政策や対中外交などの外交方針(宏池会・穏健なハト派・グローバルな対話と協調を重視)の基本的な考え方には一定の違いがあると考えられます。

岸田氏も安倍氏と同じく「憲法改正・集団的自衛権行使」には賛成の立場ですが、「タカ派の攻撃的な外交姿勢」には慎重で「核武装」についても検討すべきでないとしています。

討論会で「日本の好きなところ」を問われて、「助け合いの精神を大事にする国民性・世界にない素晴らしい社会のあり方と雰囲気」と答えています。

座右の銘は、Wikipediaでは「天衣無縫(技巧・修飾をすることなく自然・完全で美しいさま)」となっていますが、最近のニュースでは「春風接人(春風のように柔らかく協調して人に接すること)」になっています。

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