『枕草子』の現代語訳:111

清少納言(康保3年頃(966年頃)~万寿2年頃(1025年頃))が平安時代中期に書いた『枕草子(まくらのそうし)』の古文と現代語訳(意訳)を掲載していきます。『枕草子』は中宮定子に仕えていた女房・清少納言が書いたとされる日本最古の女流随筆文学(エッセイ文学)で、清少納言の自然や生活、人間関係、文化様式に対する繊細で鋭い観察眼・発想力が反映された作品になっています。

このウェブページでは、『枕草子』の『島は八十島。浮島。たはれ島。絵島。松が浦島。豊浦の島。籬の島~』の部分の原文・現代語訳を紹介します。

参考文献
石田穣二『枕草子 上・下巻』(角川ソフィア文庫),『枕草子』(角川ソフィア文庫・ビギナーズクラシック),上坂信男,神作光一など『枕草子 上・中・下巻』(講談社学術文庫)

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[古文・原文]

193段

島は八十島(やそしま)。浮島。たはれ島。絵島。松が浦島。豊浦の島。籬(まがき)の島。

194段

浜は有度浜(うどはま)。長浜。吹上の浜。打出(うちいで)の浜。もろよせの浜。千里の浜。広う思ひやらる。

195段

浦はをふの浦。塩釜の浦。こりずまの浦。名高(なたか)の浦。

196段

森はうへ木の森。石田(いわた)の森。木枯(こがらし)の森。うたた寝の森。岩瀬の森。大荒木の森。たれその森。くるべきの森。立聞(たちぎき)の森。

ようたての森といふが、耳とまるこそあやしけれ。森などいふべくもあらず、ただ一木(ひとき)あるを、なにごとにつけけむ。

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[現代語訳]

193段

島は八十島(やそしま)。浮島。たはれ島。絵島。松が浦島。豊浦の島。籬(まがき)の島。

194段

浜は有度浜(うどはま)。長浜。吹上の浜。打出(うちいで)の浜。もろよせの浜。千里の浜。それらの浜は、広いのだろうと思われる。

195段

浦はおうの浦。塩釜の浦。こりずまの浦。名高(なたか)の浦。

196段

森はうへ木の森。石田(いわた)の森。木枯(こがらし)の森。うたた寝の森。岩瀬の森。大荒木の森。たれその森。くるべきの森。立聞(たちぎき)の森。

ようたての森という名前が、耳に残っているのは奇妙である。森などと呼べるようなものではなく、ただ木が一本あるだけなのに、どうして森と名付けたのだろうか。

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[古文・原文]

197段

寺は壺坂(つぼさか)。笠置(かさぎ)。法輪(ほうりん)。霊山は、釈迦仏(しゃかぶつ)の御すみかなるが、あはれなるなり。石山。粉河(こがわ)。志賀。

198段

経は法華経。さらなり。普賢十願(ふげんじゅうがん)。千手経(せんじゅきょう)。随求経(ずいぐきょう)。金剛般若(こんごうはんにゃ)。薬師経。仁王経の下巻。

199段

仏は如意輪(にょいりん)。千手。すべて六観音。薬師仏。釈迦仏。弥勒(みろく)。地蔵。文殊。不動尊。普賢(ふげん)。

200段

書(ふみ)は文集(ぶんじゅ)。文選(もんぜん)。新賦(しんぷ)。史記。五帝本紀(ごていほんぎ)。願文。表。博士の申文(もうしぶみ)。

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[現代語訳]

197段

寺は壺坂(つぼさか)。笠置(かさぎ)。法輪(ほうりん)。霊山(りょうぜん)は、釈迦仏(しゃかぶつ)の御住処であられるというのが、しみじみと風情が感じられるのである。石山。粉河(こがわ)。志賀。

198段

経は法華経。言うまでもない。普賢十願(ふげんじゅうがん)。千手経(せんじゅきょう)。随求経(ずいぐきょう)。金剛般若(こんごうはんにゃ)。薬師経。仁王経の下巻。

199段

仏は如意輪(にょいりん)。千手。すべての六観音。薬師仏。釈迦仏。弥勒(みろく)。地蔵。文殊。不動尊。普賢(ふげん)。

200段

書(ふみ)は文集(ぶんじゅう)。文選(もんぜん)。新賦(しんぷ)。史記。五帝本紀(ごていほんぎ)。願文(がんもん)。表(ひょう)。博士の書いた申文(もうしぶみ)。

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