清少納言(康保3年頃(966年頃)~万寿2年頃(1025年頃))が平安時代中期に書いた『枕草子(まくらのそうし)』の古文と現代語訳(意訳)を掲載していきます。『枕草子』は中宮定子に仕えていた女房・清少納言が書いたとされる日本最古の女流随筆文学(エッセイ文学)で、清少納言の自然や生活、人間関係、文化様式に対する繊細で鋭い観察眼・発想力が反映された作品になっています。
このウェブページでは、『枕草子』の『尊きこと 九条の錫杖。念仏の回向~』の部分の原文・現代語訳を紹介します。
参考文献
石田穣二『枕草子 上・下巻』(角川ソフィア文庫),『枕草子』(角川ソフィア文庫・ビギナーズクラシック),上坂信男,神作光一など『枕草子 上・中・下巻』(講談社学術文庫)
[古文・原文]
264段
尊きこと
九条の錫杖(しゃくじょう)。念仏の回向(えこう)。
265段
歌は風俗。中にも、杉立てる門。神楽歌もをかし。今様歌は、長うてくせづいたり。
266段
指貫(さしぬき)は、紫の濃き。萌黄(もえぎ)。夏は、二藍(ふたあい)。いと暑きころ、夏虫の色したるも、涼しげなり。
267段
狩衣(かりぎぬ)は、香染(こうぞめ)の薄き。白き。ふくさ。赤色。松の葉色。青葉。桜。柳。また青き。藤。
男はなにの色の衣(きぬ)をも着たれ。
[現代語訳]
264段
尊いこと。
九条の錫杖(しゃくじょう)。念仏の回向(えこう)。
265段
歌(謡い物)は風俗である。その中でも、「杉立てる門」という歌。神楽歌(かぐらうた)も面白い。今様の歌は、節が長くて面白い癖がある。
266段
指貫(さしぬき)は、紫の濃いもの。萌黄(もえぎ)。夏は、二藍(ふたあい)。とても暑い頃、夏虫の色をしたものも、涼しそうである。
267段
狩衣(かりぎぬ)は、香染(こうぞめ)の薄いもの。白いもの。ふくさ。赤色。松の葉色。青葉。桜。柳。また青いもの。藤。
男はどんな色の衣(きぬ)でも着ている。
[古文・原文]
268段
ひとへは白き。日の装束の、紅(くれなゐ)のひとへの衵(あこめ)など、かりそめに着たるはよし。されどなほ、白きを。黄ばみたるひとへなど着たる人は、いみじう心づきなし。練色の衣どもなど着たれど、なほひとへは白うてこそ。
269段
下襲(したがさね)は冬は、躑躅(つつじ)。桜。掻練襲(かいねりがさね)。蘇芳襲(すおうがさね)。夏は、二藍(ふたあい)。白襲(しらがさね)。
270段
扇の骨は朴(ほほ)。色は、赤き。紫。緑。
271段
檜扇(ひおうぎ)は無文(むもん)。唐絵(からえ)。
[現代語訳]
268段
単(ひとえ)は白いもの。束帯の時に、紅(くれなゐ)の単(ひとえ)の衵(あこめ)などを、略儀で着ているのは良い。しかしやはり、白い物を着るのが良い。黄ばんだ単(ひとえ)など着た人は、ひどく気に食わないものだ。練色の衣など着ているけれど、やはり単というのは白い物が良いのである。
269段
下襲(したがさね)は冬は、躑躅(つつじ)。桜。掻練襲(かいねりがさね)。蘇芳襲(すおうがさね)。夏は、二藍(ふたあい)。白襲(しらがさね)。
270段
扇の骨は朴(ほほ)。色は、赤いもの。紫。緑。
271段
檜扇(ひおうぎ)は無地のもの。唐絵(からえ)が付いたもの。
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