老いては子に従え
(おいてはこにしたがえ)
[意味]
年老いてからはでしゃばらずに(我を通さずに)、何事も子供の言うことに従って生きていくほうが良いということ。年を取って老いると体力・集中力・判断力も衰えていくものだから、まだ若い子供に従って支えてもらったほうが、結果として間違いや困ったことが少なくなるということ。
よくある間違えとして『老いては子を従え』があるが、年老いてから子供を従えて生きるという意味合いのことわざはない。
語源は、仏教・儒教にある男女差別的な『三従(三従の教え)』にあるが、現在では男女の区別なく使われることわざである。女性(婦人)に安定と秩序のための従属を勧める『三従(三従の教え)』というのは、『女性は幼にしては父兄に従い、嫁(か)しては夫に従い、夫死しては (老いては) 子に従う』というものである。
孔子の儒教の影響が強かった古代中国で、婦人(女性)の生涯を通じての従属的地位を表した道徳規範であり、『儀礼(ぎらい)』『礼記(らいき)』などの儒学の古典に由来するとされるが、『大智度論』など仏教経典においても男性中心主義の影響で『三従』が説かれた経緯もある。
[類義のことわざ]
騏驎も老いては駑馬に劣る(きりんもおいてはどばにおとる)、 三従(さんじゅう)、 年寄りと釘の頭は引っ込むがよい(としよりとくぎのあたまはひっこむがよい)
[対義のことわざ]
老いたる馬は道を忘れず(おいたるうまはみちをわすれず)、 年は寄れども心は寄らぬ(としはよれどもこころはよらぬ)、 老馬の智(ろうばのち)
[英語のことわざ]
When you are old, obey your children.
(老いては子に従え。)
Be guided by your children when you are old.
(あなたが年老いたら、子供に従いなさい。)
[用例]
65歳を越えてからさすがに現役で社長を続けることが体力的にきつい、『老いては子に従え』で息子に事業を譲ることも考えている。
『老いては子に従え』という格言を知りながらも、我一番でわがまま放題に生きてきた俺は、子供にも妻にも煙たがられる寂しい老後を送る羽目になった。
参考文献
時田昌瑞『岩波 ことわざ辞典』(岩波書店),『新明解故事ことわざ辞典』(三省堂),日向一雅『ことわざ新辞典』(高橋書店)
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